ダナン人はベトナム人にあらず
ホイアンやフエは知らない。行ったこともない。
しかしダナン人はベトナム人ではない。どう見てもベトナム人ではない。
ダナンで初めて空港に降り立ったとき、オートバイタクシーにホテルまでの値段を聞いたら、言い値が適正価格ドンピシャリだった。
その後も、オートバイタクシーにボラれたことはこの街でまだ一度もない。
適正価格で乗せてくれるオートバイタクシー。ベトナム人の所業ではない。
ホテルにタクシーが着いて細かいお金がなかったら、ホテル入り口のガードマンが立て替えてくれた。
お金立て替えてくれるベトナム人なんてこの世にいるはずがない。
こいつはベトナム人ではない。
しかも、色をつけてすぐ返したら、色がついてるのでおかしな顔された。
おまえは絶対ベトナム人ではない。
ホテルのマッサージでVIPルームの値段を聞いたら、20万ドンだという。自室備え付けのメニューで見たのより5万ドン高かった。
まあそのくらいこの兄ちゃんの取り分でいっか、と思ってマッサージを終えて数時間後の夜中、兄ちゃんが自室のドアをノックして
「お客さん! すいません、マッサージのお金50ですー」
とのたまうではないか。
「何言ってんだ20って言ったろ! 今さら50とはどういうことだ!」
「ドア開けてくださいお客さん〜」
「もしもしフロントですか? 変な人が部屋の前に来てお金取ろうとします〜助けて!」
よくよく聞いたら、50千ドン返金するという話だった。
返金するベトナム人など、前代未聞だ。
こいつら絶対ベトナム人ではない。
というかなんでベトナムだけ千進法なんでしょうか(愚痴)。
このあたりの言語は、日本も韓国も中国もカンボジアもタイもみんな万進法なのに。
ベトナム語の教科書にもvanというのは出てくるが、実用されてるのを聞いたことがない。
僕はベトナムといえば南部しか知らなかった。
J. P. ホーガンが『造物主の選択』で描いた、鳥人ボリジャンたちの相互不信社会。それが地球上に実在するとはさしものホーガンも知らなかっただろう・・・。そう感嘆していた。
中国が北から南にかけてだんだん人間がコスくなってきて、ベトナムに入るとさらにその濃度が濃くなっていき、中国的文化圏最南端としての究極の人間不信地帯がベトナム南部なんだと思っていた。
しかし実はベトナム中部に、ものすごく純朴な人たちの住む地域がいったん挟まるのだ。
ハーン川のほとり「ダナン書店」で地図を買って気づいた。ダナン市は、中国と領土紛争を抱えている。沖合い数百キロの珊瑚礁を、南ベトナム消滅寸前のドサクサで取られたままなのだ。
まあなんだ、僕たち日本人は、ここの人たちをもっと大事にしようやってこと。
日本人とすごく気が合うと思うよ。へたしたらカンボジア人以上。
先祖がかなりここの出なんじゃないっすかね。一寸法師のお椀の舟を見ながら想う。