もっとも失いたくない家族

 ママンが一位で、お前(娘)が二位なんだ。
 一位と二位は、ほとんど変わらないけど。
 ちょーっとだけ大事さが違うんだ。


 …というようなことを、亡き、近藤紘一氏が娘に言ったと書いていました。


 子供は死んでも、最悪、また作れる。
 だけど妻が死んだら、もう、妻も子供も作れない。
 だから妻は子供より大事なんだ。


 …誰か忘れたけど、誰かがこう言っていました。


 昨日、妻が泣きながら電話をしてきました。
 僕は瞬間、直感しました。
「これは、長男か次男が死んだな…」


 折り返し電話をしてみたところ、次男が死にそうという話で、医者が診てくれない! と言って妻が泣きじゃくっていたので、
「どうして? じゃあ他の病院行け! カネなら送ったろ! 使っていいんだ!」
と言って送り出したところ、その晩にはケロッとして、今日は
「もうだいぶ良くなったみたい。もう心配いらないわ」
と言ってました。


 医者が診てくれないごときでうろたえるな!
 だから夫はカネを稼いで送っただろう!
 医者なんて掃いてすてるほどいる、そのなかでいちばんいいヤツを選べばいいんだ!


 だけど、折り返し電話をするまでの間、妙に冷静に自問している自分がいたのを忘れられません。
「長男と次男、どっちが死ぬほうがダメージ少ないだろう?」
 人は極限の選択を迫られたとき、案外冷たくなれるものなのか、それとも僕が肉親の情というものを知らないのか?


 まあ残念ながら、年齢的にはたぶんわたくしが最初だと思いますんで、奥様やお子様方には後をよろしくお願いすることになってしまうとは思うんですが…。
 そのための道はなるたけつけてから行くようにはしますんで。