小チーム成果主義で新人教育を円滑に
なぜ新人は聞きに来ないのか? - teruyastarはかく語りき
を見て、この夏、会社を作ろうとしていたころの初心を思いだした。
やっぱり社員は辞めるものだし、ある特定の社員が辞めないことに依存している会社はあやういので、誰が辞めても存続する組織を造りたいと考えていた。
この「誰も」には、僕自身も含まれる。だってそうじゃなかったら、いつまでも会社経営にかかりっきりになって、目的と手段が入れ違っちゃうでしょう。
もう一つのテーマは、やはり、新人教育が円滑に進むしくみを考えることだった。社員は辞める以上、補充しなければならない。また、業務が軌道に乗れば、業務拡張して人員を増やすことも当然念頭に置きたいからだ。
それで、勤めていた会社を辞め、自分の会社の場所を賃借するまでの半月間、僕はひたすら部屋にこもりきり、本を読んでいた。
それは人生観を変えるための読書でもなく、知識を溜め込むための読書でもない。
読んだそばから新会社のしくみに活かしていけるネタをそれらの本から余さず絞りとるための、搾取的読書(オレオレ用語、今つくった)だった。
次のような本を読んだ。
- 経営の未来
- フラット化する世界
- 簿記の基本の本(正確なタイトル失念)
まあ結果としてはこれによって大いに、人生観も向上し、有用な知識も増えたのだが、インスピレーションを記した膨大なメモも生み出された。これは上述のように、本の中で気になったところを書き出したとか、覚えておこうと思ったことを書き付けたとかではなく、今すぐ活かそうというアイデアを書いたメモの山である。
アクションに落とし込み、GTDオレオレExcelファイルに入力。*1
で、持続可能な組織、というのは、結局のところ、自己完結する組織だと気がついた。
とりわけ大きな影響を受けたのが、「経営の未来」のホールフーズの小チーム型マネジメントの話である。
そこでは、各チームはそれぞれ、自チームを経営しているといって過言ではない。
チーム構成員は、自チームの収益を、非常に短いスパンで、定期的に知らされる。何がよかったか、何が足を引っ張ったか?
そして優秀な成績を収めたチームは、表彰され、金銭的ボーナスが与えられる。
何をもって優秀な成果とするかは、事前に厳密に定義し周知しておく。
そしてそのチームの何がよかったか、その秘密がほかの全チームにバラされる。これが事業部制や、企業間の自由競争と大きく違う点だ。
新人採用すら、チーム構成員の投票によって決められる。
僕はこれにものすごい影響を受けて、気がつけば新会社の就業規則は、ほとんどこれと同じになっていた。
いわく、
- 社内にチームを複数つくる。
- 成果評価はチームごとに行う。成果が規定の基準に達したチームの構成員には、その月、それに応じたボーナスを支払う。(本当は、週ごとに評価と給与・ボーナス支払いを行おうと考えたが、総務部(私の妻だ)の負担が大きすぎると考え、当初はふつうに月単位とすることにした)
- 個人ごとの成果評価は一切行わない。個人別の数字発表すらしない。個人成果主義の会社では、誰が自分の時間を割いて、新人を教えようとするだろうか? そんなことするヤツはアホだ。
- チームのリーダーは、チーム内の秘密投票で1ヶ月ごとに決定する。総務部が選挙管理を行う。チーム内で誰がいちばん仕事できるか、誰がチームの成果を最大化する統率を現場でとれるか、いちばん的確に判定できるのはそのチームの構成員だ。社長に何がわかる。(しかし現状、まだ人数が少なすぎ、ぜんぜん秘密投票にならないwwwので、この制度も実際には未導入だ。将来、1チームの人数が8人を超えたあたりで、導入したらいいのではないかと考えている)
- 欠員が出たらチームで探してきてよい。増員指示が上から来たときは従うこと。新人の試用可否はトップダウンで決定するが、1ヶ月後、本採用の可否はチーム内の秘密投票で決定する。そいつがチームの成果に貢献する使えるヤツか、使えねーヤツかは、誰より現場がいちばん知っている。社長に何がわかる。(同上)
- 同様に、新人教育も各チームで行うこと。基本的な業務技能。チームごとに蓄積されたノウハウ。それらをチーム内で共有し、チーム全体としての成果向上を目指すこと。
- チームどうしの競争の要素は排除する。上述のように、一定の基準を満たしたすべてのチームに、同じだけのボーナスを出す。絶対評価。でないと、会社内で足の引っ張りあいになってしまう。よくある成果主義査定は相対評価なので、ここが致命的だという話はよく聞く。
ただ…まだ先月の時点でどのチームも、あらかじめ決めて告知してる「ボーナスが出る最低の基準」の成果に達してないんですよね…。
「こんなの、どんなにがんばったってムリですよ!」
という声も、社員からチラホラ出はじめていたり…。
最低基準を下げるか? しかし下げたら下げたで、下げたという事実が社員のプライドを蝕むことも恐れる。
それとも「できるんだ! 一緒に障害を克服していこう!」とハッパをかけるか?
ちょっと今、正直内心まよっている。
実際、社の設備がポンコツなせいで成果にキャップがはまっている要素も大いにあるので、その点を改善するシステム開発には、今われながら精力的に取り組んでいる。
そのバージョン1をおととい、ようやく社員にリリースできた。順調に使えているようだ。言われていた障害が、ちょっとだけ減ったという実感はあると思う。
バージョン2をさらに開発中だ。バージョン3、バージョン4まで構想している。実現すれば、社員からの評価は高いはずだ。
はやく、第一線の社員の働きだけが社員の成果に結びつき、それ以外の要素によって足を引っ張られることのない万全なしくみを、整えていかなければならない。
それが、そしてそれだけが、会社というやじろべえを支えながらおっとっとおっとっとよろめいている、経営者の奉仕すべき役柄だと思う。