プノンペン方言の声調に北京語との類似を思う


カンボジア語標準語とプノンペン方言』(坂本恭章、1968)
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/55505/1/KJ00000133669.pdf
があるある過ぎて困る。
自分が無意識にプノンペン方言の声調使い分けてることに気づく。


p6

  • タウ(行く)と違ってタウ(正しい)は低昇り

というのも全くその通りで、今も私の周りでリアルタイムでその違いを含んだ会話が飛び交っている。


しかしタウ(正しい)は、「タウ ハアイ」のように後に語が続くときには、低くなるだけで、そのあと上がらない。ちょうど、北京語の第三声の変化と同じだ。


同じページにある

  • ソック(愉快な)と違ってソック(国)は低昇り

についても同様で、「ソック クマエ」(カンボジア)などのソックは低くなるだけで、そのあと上がらない。


短母音だけではなく、ケアウ(外)という二重母音においても、単独では、低くなりちょっと下がって上がる、というまさに北京語第三声的な声調となるが、「ケアウ ラーン」(車の外)のように語が続けば、低くなりちょっと下がっただけで終わり、上がらない。北京語の第三声の変化と同じだ。


このあたりの記述がこの論文で抜けているのは、きっと、単語一個ずつ発音してもらう形式で採取したからだろう。


人間誰しも発音はサボりたいもので、万国どこでも起こりうる現象だとは思う。だからこの現象は必ずしも中国語話者によるプノンペン方言への直接的影響を示唆しているとはかぎらず、しかし直接的影響であるのかもしれず、そのあたりの研究があるのかはまた後日出会うこともあるのかもしれない。


北京語第三声の本質は下がることにあり、上がるのは勢いである。このことに目が開かれれば北京語の発音は少しはネイティブっぽくなると学んだ。プノンペン方言のrの「北京語第三声化」においても同様のことが言えるかもしれない。