Mìは麦…は誤り?

 サイゴンに住んだ経験から、私は勝手に

  • mì = 麦麺(ないし麦)
  • phở・hủ tiếu・bún = 米麺

だと思っていた。
 bánh mìも、麦だからこそパンなわけだしネ。
 小麦アレルギーのある私にとって、この識別はとても重要なので、とにかく「mì」とつく料理には手を出さないようにしてきた。


 ところがダナンにはphởやhủ tiếuの店が極めて少ない。あるのはmì quảngとかいうご当地料理の店ばかりだ。屋台しかり。mì禁忌のある私にはとっても暮らしにくい街…そう思ってた。
 (búnの店は多少あるが、私はこれはコシがなくてあまり好きになれない。麺食った気がしないのだ。アレルギーなるまでは、もともとラーメン好きなもんで…)


 ところが
http://jp.danang.gov.vn/home/view.asp?id=6&id_theloai=69&id_tin=107
によれば、mì quảngのmìはなんと米麺だという。どうなってるんですかベトナム語!? しかし、ということは私もmì quảngは大手を振って食っていいわけだ。
 今日は日本休みで仕事休みなんで、工業団地のマズいメシは食わなくていい。昼食は、昨日朝「うちはmì quảngしかないのよ。phởはないのよ」と言われた、家の前のmì quảng屋台に決まりっすね。


[追記]

 うちの前の屋台は昼は軒並み閉まっていたので、2〜3分歩いたら、mì quảng食堂があったので入った。
 注文したら、可愛い店員の女の子が「○○も食べる?」ときくので、○○がまったく聞き取れなかったけど

 失敗の機会が与えられたとき、それをあえてして失敗すれば、何をして失敗したかがわかり、二度と同じ失敗はしないですむ。
 あえてせずに失敗を避ければ、何をしないで失敗しなかったのかわからずじまいになり、一生自信を持てないで生きることになる。
by オレ

という格言に従い、「食べる」と答えた。


 すると、ゆでたまごはついてくるわ、揚げライスペーパーはついてくるわで、とんでもないことになってしまった。


 本題に入る。mì quảngはハッキリ言ってカンボジア料理だった。ピーナッツは入っているわ、汁はカンボジアカレー風味だわで、これがベトナム中部のご当地料理を名乗るのはちゃんちゃらおかしいと感じた。
 要するに、大ヒットだったのだ。私にとって。なつかしい第二の故郷カンボジアの味である。
 ああ昨日まで、食に恵まれないと嘆いていたこの地、実は知らなかっただけで、ここは故郷の味に満ちあふれていた。


 ダナンの人間、そのトロさ。コスくなさ。純朴さ。
 それはカンボジア人に大いに通ずるところがあると、かねがね感じていた。
 顔も、ベトナム人というよりも、ここの人はカンボジア分が高い。そういう造形の人がけっこう多い。
 そのうえ料理までまんまカンボジアとなると、果たしてベトナム中部は、民族的・人種的・文化的に、ベトナムと呼んでいいのか大いに疑問となってくる。むしろここはカンボジアではないのか。
 それが言いすぎなら、東南アジアご先祖様共通の何かを、カンボジアと共有しているといってもいいかもしれない。


 なお、僕が注文したmì quảng tôm thịtは15千ドン/tô。壁のメニューによればmì quảng cá lócも15千ドン、もしmì quảng gàなら18千ドンだそうだ。壁にはnứơc míaも書いてあったので、可愛い店員の女の子と話したくて注文したが、
「今はない。昨日雨だったので」
とおばちゃんが答えた。アンタに聞いてない。ていうかどんだけ産地直送なんだよ。ますますカンボジアっぽい。


 お勘定は20千ドンだった。勘定書が差し出されると同時に、さっき置かれていた手巾(追加料金かかると知ってるので僕は手をつけなかった)がサッと取り下げられる。勘定書にはしっかり、khăn 2.000が計上されている。使ってないんだけど! と抗議するにはもうあまりに満腹でめんどくさい。敵もさるもの。たとえ抗議したとしてももう現物はここにはない。水掛け論となる仕掛けである。オババめ…。やはりここはベトナムだったようだ。
 ちなみにtrứng 3.000、bánh tráng 2.000という内訳。
 Mì Quảng 1A Hải Phòngという店名のくせに77 Lê Lợiにあるという、不思議な食堂である。千葉県の津田沼に「銀座アスター」があって子供のころたまに家族で行ったが、それみたいなものだろうか?


[追記2]

 あっ! よく考えたら、15.000+3.000+2.000+2.000=22.000のはずじゃないか! 合計から何か2.000省かれてるぞ?
 と気づき、いまもう一度お勘定書を見たら、しっかり一番下に
「khăn −2.000」
と取り消されているではないか!
 オババ呼ばわりしてごめんなさいおばちゃん。
 ていうか、やっぱりダナンはベトナムではないようだ。