ダナン空港の白人マダム様

 ダナン空港の待合ロビーで、白髪の白人老女2人とロマンスグレー男性1人が、コーヒードリンク売場の前にたまっていて、店員となにやらもめている。
 どうやら、コーヒーに砂糖が入っていたので怒っているようだ。

「あなたは、砂糖を入れるべきか最初にたずねなかった!」


 店員の女の子も、またよせばいいのに正面から受け答えしている。
ベトナムのコーヒーはこれが普通なんです!」


「いいわ。でも、砂糖が入ったこのコーヒーは返品させてくれるわよね」


「それは受け付けられません」


「じゃ、砂糖が入ってないのを作ってちょうだい」


「では、あなたはお金をまた払うべきです」


「You are inhonest!」


 おいおいソリャ言い過ぎだろ、とはたで聴いてて思った。むりやりたとえていえば、中国人が日本にきて餃子を頼んだら鍋貼が出てきて激怒してるようなもんだ。いや中国人でも今どき、そんな頭カタイやつ日本へ来ないだろ。日本へ来る以上、日本ならではの何かを求めて来ているはずなのに…。
 この白人婦人は、ベトナムくんだりまできて、故郷の常識がすべて通用することを求め、外国旅行ではありがちのハプニングを楽しむ心のゆとりすら失っている。


 これが「老い」というものか…と思い、うすら寒くなった。自分も数十年後にはああなってしまうのだろう。なってしまうのだろうか?