カンボジアの労働法を通読してみた

 「日本が沈むとしたらどこに移住したい?」アンケートで30ヶ国中20位にも入らない(ビルマより下!)、カンボジア
 そんなカンボジアの労働法を通読してみました。
 自分としてキモと思う個所を以下めもめも。(※印は私の註とかツッコミとか)

14条

労働法を少なくとも1部、従業員の自由になる形で保持しておく義務がある。

17条〜20条

開業時・閉鎖時には労働担当省に届出をしないといけない。その書式は省令で定める。

21条

雇用時・解雇時には毎回、労働担当省に届出をしないといけない。

22条

従業員が8名以上いる場合は、就業規則を作らないといけない。

23条

Internal regulations adapt the general provisions of this law in accordance with the type of enterprise or establishment and the collective agreements that are relevant to the sector of activity of the aforementioned enterprise or establishment, such as provisions relating to the condition of hiring, calculation and payment of wages and perquisites, benefits in kind, working hours, breaks and holidays, notice periods, health and safety measures for workers, obligations of workers and sanctions that can be imposed on workers.

24条

就業規則は、労働者の代表と話し合ったうえで、開業後3ヵ月以内に作らないといけない。そして、労働監督官によってvisaの発給を受けてはじめて有効となる。visaは60日以内に発給される。

26条

雇用者またはその代表の一人が従業員の不品行を知ってから15日のうちに懲戒しなければ、もう懲戒することはできない。
雇用者が従業員の重大な不品行を知ってから7日のうちに解雇しなければ、解雇する権利を放棄したと見なされる。

27条

懲戒の処分は不品行の重大さに比例していなければならない。労働監督官はこの比例性をコントロールする権限を持つ。

28条

やった仕事に対して本来与えられるべき給料から、不品行を理由に減給してはいけない。
クメール語原文の語順だと、一度の不品行を理由に2回減給してはならない、の意に取れなくもない。英訳の不注意か? または、無給で働かすのはダメだけど無給停職だったらOKの意か? cf. 31条:就業規則がない場合は、6日間を超えない無給停職処分が可能。

29条

就業規則は、流布し、従業員を雇用している建物のドアに貼り付けないといけない。ちゃんと読める状態に保っていかないといけない。

32条〜36条

雇用カードを持たないカンボジア人従業員を雇用することはできない。
雇用カードは、従業員が、IDカードと、雇用者によって発行された雇用証明書を示して取得申請することにより、労働監督官によって作成・発給される。
雇用カードの発給は有料。金額と支払方法は財務省と労働担当省の共同省令で定める。
従業員を雇用・解雇したときはそれぞれ7日以内に、そのことを記入した雇用カードを労働監督官に示し、visaの発給を受けなければならない。
ほかにも雇用カードには、給料額や職務内容や契約期間などいろいろ書く。ただし、退職時に雇用者が評価を書いてはならない。

39条〜41条

賃金台帳を保持しなければならない。
使用開始前に、労働担当官が全ページに番号を振ってinitialする。使用終了後3年間は保管義務がある。労働担当官はいつでも閲覧を要求できる。
書式は労働担当省の省令で定める。独自書式でやりたければ労働担当官事務所に申請することができる。

67条

有期雇用契約は2年を超えることはできない。有期雇用契約は何回でも更新できるが、合計が2年を超えることはできない。有期雇用契約は書面で交わされなければならない。これらに違反している雇用契約は自動的に無期雇用契約となる。
有期雇用契約に示されている期間(2年ないしそれ未満)が過ぎても業務がtacitly and quietlyに継続しているときは、その雇用契約は自動的に無期雇用契約になる。
短期仕事のために雇用される日給・週給・隔週給の労働者の契約は、終了日を具体的に示さない有期雇用契約として扱われる。これは望むかぎり何回でも更新することができる。

68条

試用期間は最長3ヵ月。勤務場所が居所から遠い場合は、試用期間中の交通費は支給しなければならない。

69条

従業員は勤務時間外に、勤務先と競合する仕事をしたり、勤務先での職務に悪影響を及ぼす仕事をしてはならない。ただし合意した場合はこのかぎりではない。

70条

従業員に対し、契約終結後従事してはならない活動を契約で定めても、その条項はすべて無効。

71条〜72条

雇用契約は一時停止されることがある。
1. 雇用者が兵役に行ってしまったとき
2. 従業員が兵役に行ってしまったとき
3. 適格医師により認証された病気による従業員の病欠(最長6ヵ月、ただしかわりの従業員が見つかるまで延長は可能)
4. 労災による疾病が治るまで
5. 産休
6. 雇用者が許可したとき
7. 就業規則に沿った一時レイオフ
8. バカンス
9. 従業員が拘留されたとき(その後有罪になった場合は除く)
10. 不可抗力(最長3ヵ月)
11. 深刻な経済的事情等により経営の一時停止を余儀なくされたとき(最長2ヵ月)
一時停止期間中、従業員は働かなくてよく、給料は支払われない。ただし契約上、給料が支払われる旨の定めが別途あるときはこの限りではない。
一時停止期間は勤続年数に参入される。ただし別途定めのある場合はこの限りではない。

73条

6ヵ月を超える有期雇用契約は、更新しない旨を従業員に10日前に通知しなければ、自動的に同じ期間だけ更新される。
1年を超える有期雇用契約は、更新しない旨を従業員に15日前に通知しなければ、自動的に同じ期間だけ更新される。
これらの際、67条に定める条件により無期雇用契約になることがある。
有期雇用契約が無期雇用契約に切り替わった場合は、勤続年数には有期雇用契約期間も算入する。
有期雇用契約終結する時は、退職手当として、雇用期間中の総支給額の少なくとも5%を支払わなければならない。
雇用者側の一方的な都合で有期雇用契約を中断させるときは、補償金として少なくとも、満期までの残り期間に支払うはずだった賃金と同額を支払わなければならない。従業員側の一方的な都合で有期雇用契約を中断させるときは、雇用者が受けた損害に対し、従業員は補償金を支払わなければならない。ただしいずれの場合も、労働監督官立会いのもと合意書に双方署名したとき、あるいは従業員に重大な不品行があったとき、または不可抗力が生じたときは、この限りではない。

74条〜82条

無期雇用契約は、一方が終結したい意思を他方に文書で伝えることにより終結する。
勤続6ヵ月未満の場合は、遅くとも終結の7日前に無期雇用契約終結の意思を伝えなければならない。
勤続2年以下の場合は、遅くとも終結の15日前に無期雇用契約終結の意思を伝えなければならない。
勤続5年以下の場合は、遅くとも終結の1ヵ月前に無期雇用契約終結の意思を伝えなければならない。
勤続10年以下の場合は、遅くとも終結の2ヵ月前に無期雇用契約終結の意思を伝えなければならない。
勤続10年を超える場合は、遅くとも終結の3ヵ月前に無期雇用契約終結の意思を伝えなければならない。
ただし試用期間中はこれらの期限は守らなくてよい。重大な違反があったとき、または不可抗力が生じたときも、これらの期限を守る必要はない。
これらの期限を遅める取り決めをしても、その条項はすべて無効。またこれらの期限は、従業員の側から辞めたいと伝える場合にも守らなければならない。
雇用者側の一方的な都合で無期雇用契約終結させる場合、終結の意思を伝えてから終結までの期間が上記に満たないとき、または終結の意思を伝えなかったときは、解雇予告手当として、上記の期間に支払うはずだった賃金・諸手当と同額を支払わなければならない。
従業員側の一方的な都合で無期雇用契約終結させる場合、終結の意思を伝えてから終結までの期間が上記に満たない時点で次の仕事が見つかって繰り上げ終結させても、雇用者に対し従業員は補償金を支払わなくてよい。
上記期間中は、求職のための有給休暇を1週間につき2日与えなければならない。

83条

重大な違反とは以下のとおり。
A. 雇用者側による重大な違反
1. 相手をだまして雇用契約に署名させた。
2. 給料を支払わない。
3. 度重なる給料遅配。
4. 暴言・脅迫・暴力・暴行
5. 出来高制なのに、雇用者から与える仕事が少ない。
6. 職場の健康・安全が確保されていない。
B. 従業員側による重大な違反
1. 窃盗・横領・使い込み
2. 契約署名時の不正行為(虚偽文書提出)、勤務中の不正行為(サボタージュ雇用契約違反・業務機密漏洩)
3. 懲戒・安全・健康規則に対する重大な違反
4. 雇用者または他の従業員に対する脅迫・暴言・暴行
5. 重大な違反を行うよう他の従業員を誘引した。
6. 企業内での政治的プロパガンダ・活動・示威行為

85条

雇用者が死んだ場合、それによって企業がなくなったときは、解雇予告手当を支払わなければならない。
※幽霊が払うのか?

87条

倒産・清算は不可抗力と認めない。
※もう企業ないのに誰が払うのか?

89条

雇用者側の一方的な都合で雇用契約終結させる場合は、従業員による重大な違反が理由の場合を除き、解雇予告手当とは別に、解雇手当を支払わなければならない。
勤続6ヵ月以上12ヵ月以下なら、解雇手当は7日分の賃金・諸手当と同額。
勤続12ヵ月を超えるなら、解雇手当は(15×勤続年数(端数四捨五入))日分(ただし6ヵ月分を超えない)の賃金・諸手当と同額。
従業員の健康上の理由で解雇する場合もこの解雇手当を支払わなければならない。

90条

従業員を不当に扱って辞めたいと言わせた場合は、雇用者側から雇用契約終結を提起したわけではなくても、解雇手当を支払わなければならないし、さらには補償金も支払わなくてはならない。

113条

賃金は本人に直接手渡ししなければならない。ただし従業員本人が望むなら他の手段でもよい。
賃金は現金で支払わなければならない。そうでない取り決めをしても無効。
※銀行振込はダメなのでしょうか。

115条

賃金を酒または有害薬物で払ってはならない。
賃金を呑み屋や小売店や娯楽場で支払ってはならない。ただし職場がそれの場合を除く。
※誰得

116条

laborerの賃金は月に最低2度、最短6日のインターバルをおいて支払わなければならない。
employeeの賃金は月に最低1度支払わなければならない。
雇用契約終結の際には、給料や保証金は、仕事終結の日から48時間以内に支払わなければならない。

118条

賃金の支払いについて係争が生じたときは、賃金を支払ったことを証明する責任は雇用者側にある。
賃金台帳に従業員(文盲の場合は証人2名)の署名があれば証拠になる。
雇用者は、賃金台帳を保持しなければならない。

126条

人材派遣業者のために派遣従業員の賃金を差し引くことは禁止。

137条

労働時間は男女とも一日8時間を超えてはならず、週48時間を超えてはならない。

139条

残業手当は50%。夜間・休日出勤手当は100%。

144条

夜間とは、22時と5時の間のインターバルを含む、少なくとも11時間の連続する時間をいう。
夜間勤務の給与は、139条に定める金額を支払う。
※すみません、何度英文を読んでも、「the term "night" represents a period of at least eleven consecutive hours that includes the interval between 2200 and 0500 hour.」の意味が理解できません。英語力ないもんで…。クメール語原文によれば「連続する11時間にして、その中に22時から5時を含むべきもの」とあるので(at leastにあたる表現は原文にはない。どこから沸いてきたのか?)、たとえば18時〜5時を夜間と決めれば夜間だし、22時〜9時を夜間と決めても夜間ということなのだろうとは思いますが、それはそれで今度は、「そんな、浅い夜を含む夜間とか、どう見ても朝になってる夜間って、言葉としてアリなのか?」という疑問がわいてきます。どなたか、本当のところを図に描いて説明していただけないでしょうか…、と思っても、カンボジアでは労働法の解説書なんか売ってないのが痛いです。「労働法」って本は、ただ労働法を載せてるだけで一行の解説もなく、7ドルも取りやがります。

146条

一人の従業員を、週に6日を超えて使用することは禁止。

147条〜149条

週休は少なくとも24時間の連続する時間でなければならない。
全従業員に原則として日曜に休みを与えなければならない。ただし業種・業態によってはその限りではない。

151条

緊急の仕事があるときは、週休を延期して使用することができる。ただし18歳未満の年少者と女性は不可。

158条

週休の日と時間は、目につく所に掲示しなければならない。

160条

週休の延期を行うには、事前に労働監督官に申請しなければならない。ただし不可抗力の場合を除く。

161条

労働担当省は毎年、祝日を省令で定める。
祝日は、有給休暇算出の根拠となる勤続年数から差し引いてはならない。また、祝日に休んだからといってその分有給休暇日数を減らしてはならない。

162条

祝日が日曜にあたるときは翌日を振替休日とする。祝日を理由に月給・隔月給・週給を差し引いてはならない。

164条

業務の性質上祝日に休ませることができない企業は、かわりに補償金を支払わなければならない。補償金の額は労働担当省が省令で定める。
※祝日の延期ができるという条文はないようですね…。これはけっこう不便かも。

166条

勤続1ヵ月あたり最低1.5日の年次有給休暇を与えなければならない。
勤続2ヵ月に満たない従業員との雇用契約終結するときは、勤務した日数に比例して算出した有給休暇日数に対する補償金を支払わなければならない。
勤続3年ごとに、年次有給休暇を1日追加しなければならない。
祝日と病欠休は年次有給休暇に数えない。
※病欠休の定義は71条3項と思われる

167条

有給休暇を行使する権利は勤続1年ののち発生する。
有給休暇を行使する権利を得る前に雇用契約終結したときは、166条に基づき算出した補償金を支払わなければならない。
上記以外に、有給休暇を換金または放棄する取り決めをしてもすべて無効。
年次有給休暇が12日を超えるときに限り、従業員は有給休暇の権利を雇用契約終結まで延期することができる。ただし連続する3年を超えて延期することはできない。

168条

従業員が休暇に行く前に、過去12ヵ月の賃金の平均額を手当として支払わなければならない。
※これは170条とあわせて読まないと意味不。

170条

原則として年次休暇はクメール正月に与える。従業員と合意すればそれ以外の時に与えることもできるが、その場合はそのことを雇用者は労働監督官に通知しなければならない。
年次有給休暇が15日を超える場合は、従業員は残りの日数をその年の別の時季に取得することができる。ただし18歳未満の年少者についてはこの限りではない。

171条

従業員の家族に何かあったときは特別休暇を与えることができる。
まだ年次休暇を取っていなければそこから差し引くことができる。
すでに年次休暇を全部取っている場合は、翌年の年次休暇から差し引くことはできない。

175条

18歳未満の年少者に夜間勤務をさせることはできない。
※144条の夜間の定義が理解できない。

176条

18歳未満の年少者には夜間少なくとも11時間の連続する休みを与えなければならない。

177条

15歳未満の者に賃金労働をさせてはならない。
ただし軽作業になら、健康または心身の成長に危険でなく、学業に影響なければ、12歳〜15歳の者を雇用することができる。この雇用の種類、労働条件、労働時間については労働担当省が省令で定める。

179条

18歳未満の年少者の従業員については、その生年月日を示す登録書類を保持しておかなければならない。

181条

18歳未満の年少者が雇用契約を結ぶにはかならず保護者の同意を得なければならない。

182条

女性は出産休暇を90日取得する権利がある。出産休暇中に解雇してはならない。

183条

勤続1年以上の女性には、出産休暇中は賃金の半額を支払わなければならない。そうでない取り決めをしてもすべて無効。

184条〜185条

女性は出産後1年間、勤務時間内に授乳時間を1日1時間得る権利がある。午前に30分、午後に30分としてもよい。授乳時間を取ったからといって、通常の休憩時間から差し引いてはならない。


 このように、とっても素晴らしいカンボジアの労働法ですが、惜しむらくはこれらの条文のうち、実際にカンボジアで施行されているものは1行たりとも無い! ということです。
 あちこちに「労働監督官」が登場してますが、「どんだけ労働監督官忙しいんだよ!」と思った方、ご安心ください。彼らは実際には何も働いてません。


 日本もいいかげん労働基準法無視のブラック企業がヒドいですが、カンボジアは人の気質も「お上に逆らわず、いつも弱弱しく微笑みながら、どんな無茶でも唯々諾々、そのかわりそのストレスを自分より弱い者に向ける」という、とっても武士道(笑)的な世界なので、実はアジアでいちばん日本的経営(笑)の輸出先として素質のある国なのかもしれません。
 神風特攻隊とポルポト虐殺は20世紀アジアの二大不思議ですからね…。なんで誰も上に抗議しないんだよって意味で。なんで外国から政府が打ち倒されるまで待ってるんだよって意味で。



[追記 2009.08.08]
以下、別資料からの補足です。

海外職業訓練協会
http://www.global-hrd.jp/info/asia/cambodia/pdffiles/05laborlaw.pdf
(注:PDF)

夜間労働はスッパリと午後10 時から午前5 時

p7:

夜間労働(午後10 時から午前5 時)

 プノンペンの本屋で買った『柬埔寨投资指南』でも、
p83:

夜间加班费(22:00点至5:00点)

とあっさり済ませています。

午前と午後はやっぱりシフトじゃなく、間に休憩を挟むの意

p7:

第138 条 第2 項によれば、雇用者は、必要があれば労働者の1 日の労働時間を午前と午後などで、2 回に分割することができる。

 これが自然な解釈であり、正しい解釈でしょう。
 JICAが和訳した『カンボジア投資ガイドブック』(カンボジア開発評議会)に
p21:

作業工程がシフト制による場合は、企業経営者は通常、朝シフトと午後シフトの2シフト制のみをとりうる(第138条)。

とあるのは明らかに、英語の「shift」を日本語の「シフト」と同一と即断したための誤訳といえます。
※だいたい、朝シフトと午後シフトってなんだよ…。訳者は、そんなシフト組んでる会社見たことあるのかよ(笑)。子供向けの職業訓練校じゃあるまいし。

有給休暇は翌年行使

p9:

つまり、労働者は、勤務1 年目に取得した有給休暇を勤務2 年目に利用することができるということである。

 なるほど、これは条文から読み取り損ねていました。

特別休暇の条件

p9:

大臣令第267 労働省は、雇用者は、7 日以内であれば以下の個人的理由をもとに有給で特別休暇を認めることができるとしている。
(a) 被雇用者自身の結婚
(b) 被雇用者の妻の出産
(c) 被雇用者の子どもの結婚
(d) 配偶者、子ども、両親の病気・死亡など
年次有給休暇日数が残っている場合は、雇用者は年次有給休暇から特別休暇を差し引いてもよい。年次有給休暇日数が残っていなければ、雇用者は特別休暇に相当する時間分を相殺するために労働者に仕事をするよう求めることができる。(大臣令 第267 第2 条)
大臣令 第267 第3 条と第4 条によれば、相殺のための仕事は、特別休暇取得後90 日以内の通常の業務日に、1 日あたりの労働時間が10 時間を越えず、週当たり54 時間を超えないという条件の元で行われるとしており、通常の時間給により給与が支払われる。

 とのことです。

「夜間」のところはやっぱり誰にも理解できてなかった!

p10:

(10) 時間外手当
労働法第139 条、第144 条の解釈の違いにより、数多くの労使紛争が発生したため、この2 つの条項は以下のとおり2007 年7 月20 日付の勅令No.NS/RKr/0707/020 にて改正された。
(a) 第139 条
例外的、緊急的業務のために労働者が時間外労働を要求された場合、超過分の労働時間については通常の時間給の50%増しで支払われなければならない。もし、時間外労働が夜間(22 時〜5 時)あるいは休日であった場合は100%増しとなる。
(b) 第144 条
この法律において、「夜間」は22 時から翌朝5 時までの時間帯を含む、連続した11 時間のことを指し、「夜間労働」は22 時から翌朝5 時までの間に行われた労働を指す。通常の夜間労働に対しては30%増しの賃金が支払われる。

 これでスッキリ。
 なお、『AT WORK』(the Labour Program Unit (LPU) of Community Legal Education Center (CLEC))には、
http://www.clec.org.kh/
p8:

Night means a period of at least 11 consecutive hours including the period 10pm – 05am. (1)
Current industry practice is to pay both normal and overtime work at night at 200 % of the normal day rate. (2)
(1) There are currently discussions from the Ministry of Labour that hours at night means only the time between 10 pm am 05 am.
(2) There are currently discussions from the Ministry of Labour that the worked hours during the nightshift should be paid at a rate of 130 % of the normal wage, so the above may change as a result of these discussions.

との記述があり、これら脚注内に当時記されたdiscussionsの結果が上記勅令に結実したということでしょう。


[追記 2009.08.09]

167条一部訂正

 上記のなかで、167条の解釈が一部おかしかったのを見つけたので、その部分を次のとおり修正します。

年次有給休暇の権利のうち12日を超える分については、従業員が雇用者とあらかじめ合意すれば、これを雇用契約終結まで延期することができる。ただし連続する3年を超えて延期することはできない。