そろそろ、正しいクメール語カナ表記を
クメール語(カンボジア語)は発音が複雑で、カタカナや素のローマ字では正確に書き表すことができません。
そのため、ちまたのクメール語のカナ表記は、絶望的に不統一なのが現状です。
ローマ字をそのまま読んだために原音からかけ離れたカナ表記になってしまっている語も多いです。Khmerをただ読んだ「クメール」もまさにその例です。
少しでも原音に近いカナ表記のほうがいいでしょう。
突拍子もないカナ表記を発明する必要はありませんが。例:ソムダッィ
また、すでにあまりに人口に膾炙してしまっているカナ書きは、もう今さら変えることはできないかもしれません。例:バッタンバン
そうした基準から、よく使われる固有名詞の正しいカナ表記を列挙してみます。
有名すぎて手おくれ感のあるカナ表記
まだあまり有名でないので今なら間に合うかもしれないカナ表記
- コムポート州(カンポット)
- カエプ州(ケップ)
- ター・カエウ州(タケオ)
- クロチェ州(クラチエ)
- トゥオル・コーク区(ツールコック)
- サープ川(トンレサップ川)
- サロット・ソー(サロト・サル)
- ソムダッチ(サムデク)
- ソム・リアンシー(サム・レンシー)
- ピミアン・アカー(ピミアナカス)
- バンティアイ・チマー(バンテアイ・チュマール)
- バン・ミアリア(ベンメリア)
細かいことを言い出せばほんとは
- 短母音と長母音の違いとか 例:モンドルキリー州
- テとティの違いとか 例:バンティアイ・ミアンチェイ州
カナで表し分けできる範囲でベターな表記ができるものがいっぱいあるのですが、それを書き出すとあまりに多いので、とりあえずここでは、あまりに目に余る上記の例だけにとどめておきます。
ご考慮いただければ幸いです。
付記 表記規則についてちょっと詳しく
※ッを入れるか入れないかは好みの問題です。語末の短母音と破裂音子音の間にはッを入れ、それ以外(語末でない短母音と破裂音子音の間、短母音とそれ以外の子音の間、および二重母音・長母音とすべての子音の間)には入れないのが私は好きです。例:チャトムック、シエムリアプ
※二重子音の第一子音であるchまたはchhをチと書くかチュと書くかも好みです。例:コンポン・チナン州
※語末のnhは、nと区別するためニと書くことを提案します。これはポーランド語の「ジェニ」(日)や「ポズナニ」・「グダニスク」(地名)などのカナ表記に倣うものです。「ンニュ」と書かれることがありますが、長ったらしいし、原音からかけ離れます。例:ティア・バニ防衛相、ドーン・ペニ区
※語末のrは、スペルにあるだけで、実際には発音されませんので、「ル」と書いてはいけません。
※語末のsは、ごく弱い「h」として発音されます。発音できない「ッ」などと書く無駄なあがきはやめ、表記することをいさぎよく諦めることを提案します。例:プサー・チャ(旧市場)
※語末のnとngは、カナ表記での区別を諦め、ともに「ン」と書きます。ングと書くとかえって原音から離れますので。
※母音の区別ははなから諦めます。カナでは無理です。とりあえず、曖昧母音は「ア」、iとuの中間音は「ウ」、広いeは「エ」、広いoは「オ」、uとoの中間音は「ウ」と書くことにします。この割り当てがいちばん、カナ書きを音読するときに日本人にとって心地よいと考えられるからです。ただしaのあとに曖昧母音があるときだけ、「アア」はかっこわるいので「アウ」と書くことにします。例:タウプ(くちづけ)
※有気音と無気音のカナ表記上の区別は諦めます。タイ語では、ガシット外相・ガイヤーンなど、無気音をカナの濁音で代用する例が散見されます。が、カナで無理に有気・無気を区別しようとして原音から離れるのは本末転倒です。
※ngで始まる音は素直に「ガギグゲゴ」で表します。ンガ・ンァなどと不自然なあがきをしません。幸いクメール語には、近年の外来語を除き、g音がありませんので混同の問題は生じません。